たいつノート

ゲーム等の感想置き場

シャニマスコミュ考察 pSSR 【カラカラカラ】 樋口 円香

こんばんは。
アイドルマスター大学シャイニーカラーズ学部ノクチル学科樋口円香ゼミの時間がやって参りました。
本日は表題の【カラカラカラ】コミュの内容に関して私なりの解釈を発表させて頂きます。

先日、透pSSR【10個、光】に関する考察をより深耕すべく電子の海に繰り出したものの、Googleからの返答件数はあまりに乏しく、残念ながら満足いく収穫を得ることができませんでした。
ノクチル学会の更なる発展を願って、ここに重ねて拙稿を発表致します。

ネタバレの塊ですので、true未読の方は気を付けてください。

それでは始めます。


・コミュ①「ニガニガ」
休憩中にコーヒーを飲むP。
キッチンから出てきた円香がそれにガムシロップとミルクを入れて飲もうとする――。

選択肢。
「え?」→「何? 私と間接キスしたんじゃないかって 慌てているんですか」と高校生から煽られるP。円香不機嫌に退室。
「俺の――」→円香が別の缶であることをロジカルに指摘、続けて裏で流れている青春ドラマの1シーンに八つ当たり。〆に「……変態」
「ま、円香!」→Pキョドらず大人の対応、すぐに別の飲み物を買いに行く。円香がぽつりと「なんでこんなに苦いのを……」「全然美味しくないのを、いつも飲んでるの」「意味わからない」

初っ端からラブコメ展開フルスロットルである(但し円香にラブはない)。
特筆すべきは「ま、円香!」の展開で「円香はPが普段飲んでいるコーヒーを好みでもないのに味見しようとしていた」ことであり、Pの人となりを少しでも理解しようとして(=「掴もうとして」)の行動ではないかと思われる。これは円香→Pの動き。
本選択肢のPが「真っ先に買いに走った」のも、WING編で語られた円香のポリシーである「言葉ではなく行動で示して」を体現するものであり、円香も微糖のアイスティーをご所望するなど他に比べて機嫌が良さそう。

Pへの”苦々”しい思いが前面に出たエピソード、といったところか。
あとはコーヒーの”苦さ”であるとか、やっぱり”苦手”、だとか。


・コミュ②「水、風、緑」
撮影の下見で川沿いを歩く円香とP。

矢継ぎ早に喋るPに対して、口数は少ないが自然を満喫している様子の円香。
「――まだ本当の円香はつかまえられないか」とPモノローグ。
P→円香という方向でも「理解したい」という気持ちがあることが分かる。

転びそうな円香に対して選択肢。
(腕を掴む)→無事転ばずに済む円香。足を速めて距離を取ろうとするところで、再度転びかけ、Pが腰をキャッチ。「嫌……許さない」
(手を伸ばす)→円香は掴まず、サンダル履きの足を少し濡らしてしまう。革靴を濡らすP、タオルを取りに行く。
「危ない!」→転んで濡れてしまう円香。流れていくサンダルを必死に追うP。スタッフに借りたサンダルだからこそ「なくさないでよかった」と円香。スラックスまで濡れたPが更に「えっ」と言って水音。

どの択を見ても一生懸命なPの姿が印象的だが、皮肉なことに唯一円香が濡れずに済む(腕を掴む)では、一番円香が不機嫌になってしまう。
円香はPに対して必要以上に干渉してほしくない、出来れば関わりたくない、というスタンスを一貫して取っており、ある意味当然の帰結ではある(しまいに腰まで掴まれた日には)。

円香との距離感をつかみかねるPの苦労や、それでも真っすぐに、時に己も顧みず仕事に向かうPの姿が描かれているコミュと言えそう。

コミュタイトルの「水、風、緑」については、順当にシーンを切り取ったものと言えそうだが、別の視点から後程検討する。


・コミュ③「掴もうとして」
円香とPの別れ際を描いたシーンが次々と切り替わる。事あるごとに距離を置かれるP。
夜の踏切から切り替わって暗転。「ああ……お疲れ様!」とP。ここから長めの暗転。「お疲れ……」「円香……」
夕焼けの事務所で微笑む円香。「本当、あなたってダメな人……」
「――いつまで寝ているんですか」という声でガバリと起き上がるP。「……あれ……毛布……」「寝てたのか……いつの間に……」

選択肢。
「水でも飲もう」→Pモノローグ「変な夢を見たなあ、夢は現実の投影だとかいうけれど」「どこからが夢……」。「いや――」と何か言おうとして、グラスを落として割ってしまう。「……本当にダメだな」
「……今、何時?」→円香からメッセージ、「明日の集合場所の地図、届いていません」等々。送り返すと返信、「いつまで寝ているんですか」
「今日はもう帰ろう」→帰ろうとするも、明日の集合場所を連絡しなければならないことに気づいて送る。返信、「わかりました」「本当、あなたってダメな人」

難解。
ここでは「円香は事務所に来て、寝ているPに毛布を掛けた」ことまでが事実であり、Pの回想(=優しいセリフとともに微笑んでいた円香)は現実の円香の行為が夢の中で変容して見えた姿、と結論付けたい。

手掛かり①、時系列。Pが最後にセリフを発する「ああ…………お疲れ様!」は夜の踏切。この後に挿入される「優しい円香」シーンは夕焼けの差し込む事務所である。時間が巻き戻っている以上、現実とは考えづらい。
当然、暗転を挟んでいることから、踏切で別れたのとは別の日のエピソード、と見ることもできるが、眠りに落ちている最中と思われる「お疲れ……」「円香……」の間も踏切は鳴り続けており、ここを別シーンとして切り離す解釈にはやや無理が感じられる。
従い、以下の考察も含めて本稿では、「踏切で別れたP→居眠り→地図送付」という時系列を前提に考えたい。

手掛かり②、円香はPが寝ていたことを何故知ったか。「いつまで寝ているんですか」というメッセージ(※)から、円香はPが寝ていたことに気づいていた、つまり事務所に寄っていたのではないか、という仮説が立てられる。
円香がオフの時間に自主レッスンをする描写は、WING編「バウンダリー」や本コミュの導入部にも見られ(「かなり前に終わ」ったレッスン場に居残っていた)、踏切でのPとの別れの後、レッスンを済ませ事務所に寄った、と考えることにさしたる不自然さはない。
※もちろんPから「すまん、寝てしまって……」というような釈明がシナリオ外で成されていた可能性もゼロではない。ゼロではないが、テキストにない仮定を要する点でやや説得力に欠ける。

手掛かり③、毛布は本当に円香がかけてくれたのか。はづきさんかもしれないし、透かもしれないし、ひょっとしたら社長かもしれない。答えは定かでない。
定かでないが、コミュ①で我々はひっそりとPの嗜好に近づこうとする円香を見た。そこから窺い知れるのは、「本人の目の前でなければストレートに感情を表せるのではないか」という一面である。多分にオタクの願望になるが、ここでは円香が毛布をかけるという優しさを示してくれたのだと思いたい。思わせてくれ。

以上を総括すると、Pが夕焼けの中に見た円香は夢である可能性が高い。そうではあるが、円香が見せた心遣いは本物であり、その時にどのような表情・声色であったかは、我々プレイヤーの想像に委ねられており、当然Pの夢見たような、労わりに満ちたものであったとも考えられる。

というわけで、円香の(言葉にはしないが)Pに対する思いやりや優しさが感じられるエピソード、と位置付けることにする。

「掴もうとして」はP側からのアプローチに対して、今一つ反応の薄い円香、そんな中で奮闘するPの日々の努力を表していると考えられる。夢や幻は掴めないもの。

(補足……コップを落とすあたりに何がしかの暗喩が潜んでいるような気がしつつ、考察不足で掘り切れなかったので、更にヒントがあるとすればこの択ではないかと考える。一応、夢を否定しようとしてコップが割れる=現実に引き戻すので、やはり夢という結論ではないかと、現時点では捉えている)


・コミュ④「手すりの錆」
事務所で円香を探すP。円香は屋上で夕日を眺めていた。
サインの出来栄えを褒めるところから、話はノクチルのメンバーである幼なじみの話へ展開。
円香「……好きとか嫌いとか、あえて考えたりしませんね」「一緒にいるのが当たり前なので」に対し、P「ああ、そうか――」「アイドルを続けていれば、ずっと一緒にいられるもんな」。ここで夕日に向かう円香のカットが入り、「……さあ、どうでしょうか」と円香。
円香は会話を切り上げて去り、Pはため息をつく。

これまた難解。
本コミュのテーマは「円香がアイドルを続けている理由」だと考えるが、会話を辿っても円香は「さあ……どうでしょうね」と答えるだけで多くは語らない。まずこのセリフに注目してみると、コミュ②の冒頭にもまったく同じ言い回しが登場する。ここから伺えるのは円香が「適当に相槌を打って」いること、Pとそんなカロリーの高い話をする気は更々ないという拒絶の意思表示である。

言葉で語ってくれないのであれば、我々は推察するしかない。
そして本コミュを解き明かす補助線として、WING編の解釈における「燃焼反応」説を用いることが最適であると考える。
燃焼反応説とは、多くの先達が指摘している(※)点に勝手に名前を付けさせてもらったに過ぎないが、WING編「二酸化炭素の話」を、「有機物(C)と酸素(O2)が燃焼すると、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に変化する」という化学変化になぞらえて解釈することである。
全力でアイドル活動に取り組むことを「燃焼」と捉えると、その結果泣き出してしまったとあるアイドルの涙は「水の生成」、また円香の感じた居心地が悪い空気は「二酸化炭素濃度の上昇」とリンクする。WING編を通じて、円香はPのことを「高燃費」「情熱を燃やさないと」「エネルギッシュ」と評しており、ここからもアイドルに対するやる気や情熱と「燃焼」というモチーフを結びつけて考えることができる。
※実装当日ぐらいにTwitterで見かけたが、最初に気づいた人はマジの天才だと思う。

この解釈をより敷衍すると、円香のその他のコミュも「燃焼」というモチーフで読み解けることが分かる。
WING勝利後コミュである「蛇足」ではPが涙を流していたことが語られるが、これは円香が熱意を持って取り組んだ完全燃焼の結果。一方で、敗退コミュである「風穴」では、再挑戦に向けたPと円香の決意が垣間見えるが、ここで言う「風穴」は敗北によって心に負った傷のみならず、円香の心に風が吹き込み、燃焼の準備が整ったことをも暗示している。

コミュ②のタイトルである「水、風、緑」についても、H2O,O2,Cと全てこの燃焼反応に関わる要素に紐づけることができる。これはあくまでフレーバー的な要素でコミュの主題とリンクしているとは考えづらいが、一貫性はあるので、参考として挙げた。

このような文脈で本コミュ「手すりの錆」を解釈するとどうなるか。
鉄は水分と空気中の酸素によって酸化することで錆となる。理科の授業を思い出してほしいが、金属が錆びることも燃焼も「同じ酸化反応の一種」である。つまり、錆とは燃焼ほどの激しさではないが、内に秘めた感情により、徐々に変化しつつある様子……と考えられる。この「手すり」の酸化反応は、円香の心情とシンクロしていると見て間違いないだろう。

挿入されるイラストを見れば分かる通り、円香は手すりにもたれて空を見ている。屋上という舞台設定、円香の上着には小さな羽のプリントが描かれていること、「283」プロダクションという名前に込められた意味を踏まえれば、「手すり」は空に羽ばたこうとする心を閉ざしているものの暗喩でもある(空=アイドルが目指す高み、というイメージは作中に頻出する)。その手すりが静かに、だが確実に、錆に変容しつつある。
円香は「期待を背負う」「必死に生きる」ことに対する強い忌避感を持っていることが伺え、オーディションが「怖い」とすら語る(WINGコミュ「心臓を握る」)。だが夕日を見つめる円香は、そうした恐怖を乗り越え、羽ばたこうとする決意を胸に秘めている――と、見ることはできないだろうか。

本コミュの総括としては、Pに対しては相変わらずそっけないが、円香にも変容が起こりつつあり、アイドルに向けて熱意を燃やし始めた(ことを推察できるかもしれない)としておきたい。


・trueコミュ「エンジン」
仕事帰りの車内。
Pの「でも、ちゃんと信頼してもらえるように努力するよ」「嫌いのままだったとしても」に対して、円香「あなたがそれをするだけの、理由が……」「私に――…………」と言いよどむ。ここから「答えないで」という円香と「言わせてくれ」というPで4,5往復。
「最悪」と言う円香に根負けしたP、「今日のところはやめておくけど、 円香にもきっとわかる日が来るさ」「だから、せめてそれまではここにいてほしい」と。円香は「……わかりました」「とりあえず、あなたがこの車を止めるまでね」

難解が過ぎる。この女はいったいどこまで我々を悩ませれば気が済むのか。
ざっくりと2つのポイントを考える。

①円香の自己評価に関して。序盤のセリフで「Pが努力するだけの理由が私に(はない)」と言いかけている円香。そしてそこに踏み込もうとするPに今までにない拒否反応を示す。
円香は恐らく自分がPに必要以上に厳しい態度を取っていることにも、それでいてPが真摯に接してくれていることも自覚しているはず。そして「私に手をかける理由なんてない」と言ってしまえば、Pが優しい言葉でフォローを入れてくることも分かっているだろう。分かっているが故に円香は答えを遮断した。
Pに心の奥まで踏み込んできてほしくないという気持ちも当然あるだろう。だがそれと同時に、円香は「アイドルとして」「客観的に」自分を測られたいのだと考える。勝負の世界で評価されることへの恐れが円香の根底にあることは既に見たが、その恐れを乗り越えて円香はWINGに挑み、勝ち取った。裁かれることへの恐れがあるからこそ、それを糧に努力を重ねる円香というアイドルにとって、自分という人間をありのまま受容してくれるPの存在は、鍛錬を鈍らせる存在でしかない――とは、少し行き過ぎた考察になってしまったが、いずれにせよ、円香のプライベートな心はPにはまだ閉ざされたままである。

②「とりあえず、あなたがこの車を止めるまでね」に込められた思いは何か。言葉の意味をそのまま捉えれば、「今日の仕事終わりまでは一緒にいてあげてもいい」、といういつもの円香節である。もちろんPは「事務所に在籍して、アイドルを続けてくれ」という意味で言っているので、Pの願いに円香は応えていないように見える。
しかし円香は、思っていることと正反対のセリフを吐くことがある(決勝前コミュ、送り出すPを前に「――何それ」「最低」など)。この素っ気ない言葉の裏に、何か込められた想いがあるのではないか。
当然、ここから先は「推察」であって、円香がどう考えているかの描写ははない。直接の描写はないのだが、公式から提示された手掛かりとして、コミュタイトルである「エンジン」に注目してほしい。
もうお分かりだろう。またしても「燃焼」である。エンジンは、動力源と熱反応を起こす場所が一体となった「内燃機関」だ。外部の熱で動くものではない。
「手すりの錆」において、円香の心境には変化が生じていた。その心に、WING優勝を経て、「エンジン」では完全に火が付いた。いまや円香は動力源となって燃え始め、アイドルという目標に向かって進みだそうとしている。
しかし車はエンジンだけでは動けない。ハンドルを操るドライバーが必要――言うまでもなく、これはPだ。Pの必要性を認めているからこそ、「あなたが」この車を止めるまで、(私は)「ここにいる」のである。

円香は一人で努力を続けていたが、trueコミュに至って、Pと共にアイドルを続けるという決意を少しずつ見せ始めた、と読むことは出来ないだろうか。


・カード名「カラカラカラ」
true解釈がまとまったところで、カード名もきれいに分かるかというと、そんなことはない。円香は我々の手をすり抜けていく。
このまま解釈しようがないので、とりあえず辞書を引いてあてられそうな字を片っ端から検討する。

「辛」:コミュ①ニガニガからの連想で、味覚繋がり。からいともつらいとも読める。アイドルになるための努力。他者を理解することの困難さ。
「空」:空っぽ。漢字は空(sky)や空気に通じる。円香が羽ばたく空。ノクチルの透明性。
「虚」:うつろ、虚像。Pの見た夢(あるいは現実)。
「唐」:夕日が「からくれないに みずくくるとは」の紅さを連想させるが、こじつけくさい。…と思ったら思い出アピールLv.MAXが[カラ]クレナイだった。
「殻」:からだを守るもの(→手すり)。あるいは、その役目を果たし終えた抜け殻(=成長の痕跡)。
「カラカラ」:(擬音語として)どことなく夕焼けのさびしい雰囲気にマッチしそう。(擬態語として)熱。渇き。勝利への欲求。

正直なところ、どれもあり得そうで甲乙付け難い。何なら、最も無いだろうと考えていた「唐紅」が思い出アピールに採用されていたことに気づきますます分からなくなってしまった。
(一応引いておくと、「ちはやぶる神代もきかず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」という和歌があり、これは鮮やかな紅葉の美しさを詠んだもの。情景として重なる部分はあれど、心情的には一致しない)

公式が「唐紅」を提示している以上、これとぴったりハマりきらない「カラカラカラ」という表記は、あくまで抽象性を持った音の集合体であり、多様な解釈が可能という位置づけにとどめておいてよい気もする。
というわけで、上記に挙げたイメージをすべて内包しているようと思う。

やっぱり、円香のことは分からなかったよ……。

 

 

ご意見ご感想ありましたら頂けますと幸いです。

以上

2020/05/27:初稿