たいつノート

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シャニマスコミュ考察 【10個、光】 浅倉 透

こんにちは。
アイドルマスター大学シャイニーカラーズ学部ノクチル学科浅倉透ゼミの時間がやって参りました。
本日は表題の【10個、光】コミュの内容に関して私なりの解釈を発表させて頂きます。

リリースから時間が経ったこともあり、恐らく巷には似たような考察があふれていることと思われますが、自らの文学的インスピレーションを言語化することを目標としておりますので先行研究には一切目を通しておりませんことご容赦ください。
また当然ですがネタバレの塊ですので、true未読の方は気を付けてください。

それでは始めます。

・コミュ①「1こめ」
番組企画かインタビューなのか、「一生のうちにやりたい10のこと」を考える透。
「いっぱい寝る」「映画とか観る」「ブラウス欲しい」等々、あくまで日常生活の要素程度のものしか挙げていかない。
「今やりたいこと、今大事にしなきゃ」と語る言葉に集約されている彼女の価値観は、非常に狭い範囲で完結していることが伺える。しかしこれは単に視野が狭いということよりも、周囲の世界に対する解像度の高さから、一見些細な日常生活にも様々な喜びを見出して満足しているのではないか―と思えなくもない。
少し脱線するが、本カードを構成するコミュ群は、透の日常の一シーンを切り取ったものであり、大きなイベントは何も起こらないが、全体を通じてこのような透の感情の機微が丁寧に描写されているのが分かると思う。

プロデューサー(=以下P)の選択肢↓
「いっぱい寝る」→ただし、いっぱい寝て、いっぱい頑張ることだよと、透に答えを提示。
「アイスコーヒーつくりたい」→透の力になれるよう頑張っていきたい、という意味だと。これも透に答えを提示。「一生かけてやり遂げたいこと」とのセリフに反応する透(いわゆるPラブの表出)。
「―――」→Pは答えに詰まり、透から「この質問の答えを見つけること」だねとサラリと躱される。コミュもあっけなく終わり、Pが答えられないことがいわゆるバッドコミュニケーションにつながるが、透にゆだねた場合はまだ何も解がないという事実も示している。

以上の選択から、「アイドルの進むべき道を示す」「アイドルを支える」というP視点からの「やりたいこと」が提示される一方で、透にはまだ”アイドルとして”「やりたいこと」が見えていないことが分かる。

まとめると、日常の価値観から脱却できていない透、アイドルとしての道を示すPという関係が描かれているのがコミュ①。


・コミュ②「2こめ」
事務所から家に帰る途中、バスに乗る透とP。

毎日乗っている家の近くの道だが「いつもと反対側だから」(=つまり事務所からの帰りだから)見えている景色が違う。「暗くなると、もっと分かんなくなる。」と透。
同じ風景でも周りの状況や心の持ちようで見えている心象風景は変わるということ(trueへの布石)。

バス降車ボタンを押したかったのでちょっとすねる透。ここは「透ってちょっとお子様っぽいとこあるんだよな~うんうん可愛い」となるに留まらず、行動を起こした(=ボタンを光らせた)のはPであって透に主体性はない点が示唆的。

「昼光ってるものって、見えないんだね」「夜なら見えるのに」と。バスの降車ボタンとか、人の家の灯とか。

これに対してP、ボタンを「ホタルみたいだな」と言い、モノローグで「ちゃんと、伝えられるかな」「もう光ってるもののこと――― 昼の間も、ちゃんと光ってもののことを」を経由して、「俺、ちゃんと見えてるからな 昼の間も光ってるもの」と伝える。
ここで夕焼け空に浮かぶ星がひとつ輝いて〆。

言うまでもなく、光や輝いているものはアイドルのメタファーであり、Pが語る「昼の間も光っているもの」は透のこと。
透は「昼間光っているものに、夜にならないと気づかない」が、Pはその輝きを見出してスカウトして、アイドルという舞台に引っ張り上げた。この日常⇔非日常という展開に、昼(光っているものが埋もれている時間)⇔夜(光っているものが輝きだす時間)が対応していると考えると、その狭間である夕方は等身大の透とアイドルとしての透が重なり合った舞台になっている。(お約束ですね)
Pは「ホタル」と常識的なたとえを持ち出しているが、透の所属するユニット名「ノクチル」が夜光虫ことノクチルカが元ネタとなっていることは別稿ですでに指摘した通り。透と円香がそうだったので、恐らく小糸と雛菜のpSSR1枚目も夕方のイラストになるだろう。

Pがしっかり自分の想いを透に伝えようという姿勢が、汎用のアイドルコミュにおける浅倉の姿勢と重なるところがまた良い。

というわけで、「透にとっての世界の見え方が”アイドル”を通じて変わりつつある」こと、「そんな透に向き合う決意を示すP」が描かれているのがコミュ②。


・コミュ③「3こめ」
アクション映画を観る透。Pが通りかかって一緒に観ることに。「この後さ、キスシーンくるから」と透。

選択肢↓
「――ええと、それは」→照れる透。2人でキスシーンを見守る。
「――ははっ」→「親とテレビを観ていて気恥ずかしくなるような」とP。「親だったら、もうちょっと平気かな」と透。
「あ、おう…!」→電話がかかってきて仕事に戻るP。「上映中はマナーモードにするか、電源をお切りください」と透。

これにはオタクもニッコリのご褒美枠(いわゆるPラブの表出)。


・コミュ④「4こめ」
ファミレスで食事を済ませ、Pが会計をしようとする。
「――奢ってもらってるって感じなんだ、なんか」 「今日私のやったこと、釣り合わないなって――」とワリカンを提唱する透に対して、

選択肢↓
「気にしないでくれ!」→折れない透。その分レッスンを頑張るように告げるP。
「待ってくれ…!」→「透と俺が個人的に遊びに来たっていうんなら 奢ったり奢られたり、ワリカンしたりっていうのもいいけど」「今は、仕事の時間だからさ」とP。「じゃ、今度はワリカンね」と透(いわゆるPラブの表出)。
「だ、ダメだ…!」→「仕事できちんと成果をあげなきゃって思ってくれてるんだな」「俺は、お金とかごはんとか そういうもので透とつながってるとは、思ってないからさ」

「待ってくれ…!」で示される、「仕事抜きで食事に行きたい」という透の想いを中心に考えると、Pが仕事という側面を熱弁する「気にしないでくれ!」に対する反応が若干残念そうな感じに見えるのに対し、「だ、ダメだ…!」の透は少し喜んでいるように見える。
Pドル勢大歓喜コミュの皮をかぶりつつも、「透にとっては、アイドルとプライベートの区別があいまいで表裏一体」という点を描いていることにも注目できる。


・trueエンドコミュ「いつか」
夕方、1つだけ光る星を見つける透とP。Pは星の名前を知らない。

丘から見下ろす街の景色を「世界中」と表現する透。
「ここって、誰かのもの?」「なんだろ、そういうんじゃなくて…世界?」
「誰かのものじゃないといいなって 思っただけ」「ここが」「なんか、今が」と続ける。

星がたくさん出てきて先ほどの星がどれか分からなくなる。「えー 見つけてよ」と透。
透は思いついて、「一生にやりたい10のこと」に「さっきの星、見つける」を加える。
「そりゃあ、… ははっ、いつになるんだろうな」とP。

「いつか」
「でも、見つけられるから」
「誰のものでもないんだったら――」
透の発言で〆。

読了した際には得も言われぬエモさを覚えるが、よくよく考えると透は何を言ってるんじゃい!という気分になる。
疑問は主に2つ、「”ここ”って何?」「”星をみつける”って何?」という点である。
シャニマスの優れて技巧的なカードにありがちだが、これまでのコミュに解釈の手掛かりが示されているので拾いながら読むとする。

*疑問点1「”ここ”って何?」
コミュ①で明らかにされたように、透にとっての”世界”はあくまで”透が知覚できる範囲の世界”、”透の身の回りの世界”であるとすると、街の景色を「世界中」と表すことはそう不自然ではない。
ただし、透にとっての「ここ」「今」は紛れもなく透のものであり、「誰かのものじゃない」のは当たり前のこと。
考えられるのは、”透がPと一緒にいる”「ここ」「今」が透にとってかけがえのないものであり、独り占めできたらいいな、という解釈。すなわち、「ここ=Pの隣」説である。
透にとって、アイドルとしてPと共にいるのか、一個人としてPと共にいるのかという区切りはさして意味を持たない。もっと言うなれば、コミュ④やWING編等、個人としての関係を重視しているように見受けられる描写も多い。俗に言うPラブの表出である(が、「ラブ」という言葉で雑に括ることには注意が必要)。

*疑問点2「”星を見つける”って何?」
コミュ②の例からして、星はアイドルのメタファーであり、Pが最初に見つけた星=透。
次第に星が増えて”最初の星が見つけられなくなる”ことは、「Pはかつて幼少期の透と知り合っていたが、今では多くのアイドルをプロデュースするという立場で、担当アイドルの1人として透と再会する」ことと対応しており、WING編の主題にもなっているが、透にとってPは「運命の再会を果たした人」であるのに、Pにとっての透は「大切な担当アイドル」であるというすれ違いの構図が反映されている。
とすると、透の「えー見つけてよ」発言は、「思い出してほしいから」というWING編のセリフとも対応し、「気付いてほしい」という透の想いが込められていることが分かり、前述の「誰かのものじゃないといいなって」にも呼応する。申し訳なくなるぐらい雑に換言すると、「私だけを見つけてよ」ということなのだが、それを緻密に繊細に芸術的にエモエモに伝えてくるのがシャニマス匠の技である。

そして、続く「一生にやりたい10のこと」に「星を見つける」を加える透の発言だが、コミュ①を踏まえると、これは「アイドルとしてやりたいこと」が透に見つかった、という描写でもある。
それは数多のアイドルの中で輝く自分を見つけるということでもあり、浅倉透という一人の人間(女性)としてPに見つけてもらうということでもあり、透の世界の中で日常に潜む輝きとアイドルとしての目標が一致した瞬間でもある。この2つの想いの重なりと、昼とも夜ともつかない夕焼けに輝く星空という情景がぴたっと寄り添い我々の心にエモさを生む。

アイドルマスターシャイニーカラーズ……最高かよ……。


・コミュ名、カード名に関して
ここまで書けばお分かりの通り、「10個、光」は「一生にやりたい10のこと」に込められた透の想いであり、Pと紡ぐ日常の一コマ一コマが世界を構成する光であり、一つずつ数えて思い出したくなるような掛け替えのないものだということ。それが題名を与えられずに数でしか数えられないというところに、自分に秘めた感情を上手く言語化して伝えられない透の不器用さが出ているようにも感じられる。「いつか」はtrueコミュの内容を透らしいセリフで切り取った素晴らしいタイトルだが、「五つ」にも通じ並べた時のおさまりの良さを感じる。


以上になります。
これから私も皆さんの考察を読んでより理解を深めたいと思っております。
ご意見、ご指摘がありましたらお寄せ頂けますと幸いでございます。

 

2020/05/24: 初稿

2020/05/25: 誤字、体裁修正