たいつノート

ゲーム等の感想置き場

シャニマス考察 sSSR【ハウ・アー・UFO】浅倉 透

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シャニお得意の"玄人の引き"構図

みなさまこんばんは。

アイドルマスター大学シャイニーカラーズ学部ノクチル学科浅倉透ゼミの時間がやって参りました。

 

夏も終わりに近づこうとしている今日この頃、ようやく【ハウ・アー・UFO】を読むことができたので考察していきたいと思います。
ある程度は感想っぽい部分も出てきてしまいますがそこはご容赦ください。

 

・ノクチルの日常と透の立ち位置

本コミュは、「透がUFOを探そうとする(だけで結局何も起こらない)」と簡潔にまとめられてしまうぐらい、何ということはない日常のエピソードです。アイドルのアの字も出ることはなく、透たちにとっての、ごく普通の夏休みの一幕を描いています。

 

アイドルとしてのノクチルの描写と比較したときに、「透がいつも四人の中心にいるわけではない」ということが言えるのかなと思います。
シナリオイベント「天塵」での描写やそれぞれのプロデュースシナリオを読んでいて、ノクチルの中心はやっぱり透なんだなあと漠然と感じていたのですが、むしろそれはイレギュラーな事態で、「突っ走り気味の透に周りが合わせている(合わせてしまう)」というのが正確なのでしょう。


本コミュでは、透がUFOを探そうとして、空をカメラで撮ったり、UFOに向けて交信を試みたりするものの、他の三人の反応は芳しくありません。ただ、ここで誰もUFOの存在を否定したり透を馬鹿にはしないところがノクチルの四人の距離感であり、透のモノローグでも「よかった」と語られるように、四人がつながっている所以なのだろうと思います。それぞれの性格も趣味嗜好も全く異なるけれど、幼なじみという地縁からゆるくまとまっている関係性が、宇宙になぞらえて「ろーかる銀河」と例えられているような気がします。

 

他のメンバーの描写も興味深く、特に甘党である円香がベビカス(円香の口から発せられるとことさら味わい深い略し方)を食べることを躊躇したり、例年なら計画よく夏休みの宿題を消化しているはずが終わっていなかったりと、アイドルを始めたことによる変化が窺えるポイントがちらほらあります。

 

・「UFO」とは何なのか?

幼なじみたちと透が紡ぐ日常に対して、UFOは非日常の象徴として存在しています。
透はUFOそのものに強い思い入れや好奇心があるわけではなく(小糸が「反応薄い……!」と驚いているように早くも興味をなくしてしまっている)、未知との遭遇やまだ見ぬものへの憧れとして追いかけているように感じられます。だからこそ、謎の光の正体を知りたい気持ちよりも「自分が出会えなかったこと」を悔やむ方が心情としては大きいのでしょう。ここで出てくる一つ目の「そっか」は、少し悲しげな声色になっています。

 

そしてその光が人工衛星であった可能性を告げられた透は、納得するように二つ目の「そっか」を口に出します。まったく手の届かない存在と思われたUFOも、実はもっと身近な人工衛星かもしれないのです。
人工衛星は、「どっかに行きたい力と行けない力で ぐるぐる周る星」と説明されていますが、これは分かりやすく日常(地球)と非日常(宇宙)の間で漂っているノクチルであり透自身のメタファーになっています。ちなみに円香が「人工衛星だったら今も(=昼も)飛んでるんじゃない」と言っていますが、これは同じく透のシナリオであるpSSR【10個、光】でPが語った「昼でも光っているもの」と同じ文脈でしょう。

 

人工衛星や宇宙に思いを馳せる透が「夏休み 長いなー」と言い、直後に樋口からのメッセを見て宿題がすぐには終わらないことを悟り「夏休み 短いわー」と現実に引き戻されたように手のひらを返す……という独り言がコミカルに描かれていますが、これは「UFOもしくは人工衛星」に対する透の呼びかけ(これも独り言ではある)と交互に展開されており、後者の文脈では真逆のようにも読めるようにも思います。つまり、いつも通りの変わらない(=「人工衛星」とは無関係の)夏休みは長く感じられるけど、アイドルを始めてからは(=「人工衛星」に語りかけるような距離感になってみると)日々がずっと短く感じられる…というような読み方もできそうです。

 

コミュタイトルの「ハウ・アー・UFO」は言うまでもなく、「そっちはどうですか」という最後の呼びかけに対応していますが(少しダジャレっぽくもある)、UFOに対して二人称的に「どうですか」という言葉が出てくるのが透らしくもあり、前述のメタファーの文脈で捉えると、ノクチルの今後に対する自身への問いかけでもあります。

 


本コミュの総括ですが、夏休みの終わりと浴衣というエモ訴求抜群の舞台設定に、何気ない日常を描きつつ、宇宙や人工衛星という一捻り加えたモチーフから透のアイドル感をそれとなく示唆するという巧さもあり、また夢見がちな空想家であるとか、不思議ちゃんのように見えて意外と頑固であるとか、爽やかカリスマアイドルにとどまらない透の魅力が十分に描かれていたように思います。

透コミュは本当に毎回素晴らしいですね。

2020/09/13:初稿