たいつノート

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シャニマス感想 GRAD編&【アンシーン・ダブルキャスト】黛 冬優子/ストレイライト二周目世界観考察 

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みなさまお久しぶりです。

前回記事の後、ストレイGRAD追加に始まり、夏の越境イベント「アジェンダ283」、怒濤の限定三連(冬優子三峰凜世という太客の多そうなドル箱ラインナップ)とシャニマスでは更新が目白押しでしたが、対馬を蒙古から守り抜くのに忙しくブログの方が滞っておりました。

考察を深めたいなあというコミュはたくさんあるのですが、その前にストレイPを自任する者としてこれをやらない訳にはいきますまい、ということで、黛冬優子GRAD編及び【アンシーン・ダブルキャスト】について触れたいと思います。

タイトルを感想としているのは、単純に本稿がお気持ち表明に他ならないからです。公式が大正義ということは理解しているのですが、自分の中で折り合いを付けるためにここで膿を吐き出しておきます。許せ。
贖罪の意味も込めて後半にはストレイ二周目のフェスアピールに関する考察メモをシャニマス学会に提出します。

 

・GRAD編について

冬優子が可愛くないのである。
大事なことなのでもう一回書きますが、冬優子がぜーんぜん可愛くない。

 

思うに黛冬優子は、「表面的には好印象だけど、実は性格悪くて強がりで、でもでもその内には思いやりのある一面やか弱さを秘めている」ところがあります。アイドルでかわいい「ふゆ」というキャラ、ストレイやPに見せるプライドの高い「冬優子」、そして素の飾らない第三の冬優子自身が存在するという「冬優子三位一体説」は古くから説かれてきました。
そして我々Pは第三の冬優子が顕現する瞬間にこそ心を動かされてきたのではあるまいか、と思うわけです。(WING編で逃げ出した後に戻ってくるシーンや決勝敗退、@ストーリーズ等々。ファン感やStraylight:Runについては第二の"アツい"冬優子が前面に出ていた感じもあります)
二重三重の構造にはなっているものの、極めて雑な括り方をすれば、古き良きツンデレの系譜にあるキャラと言えるでしょう。

 

これがGRADではどう描かれているでしょうか。
冒頭では、これまでの言動を冬優子自身が振り返り、Pやストレイに対しては「ふゆ」の見せ方が甘かった、と回想するシーンが印象的です。その後、密着取材でも完璧に「ふゆ」を演じ切り、さしたる壁やトラブルもなくエンディングを迎えます。え……これだけ??
そしてPが度々見せる気遣いは全て空振りというか軽くあしらわれ、やたらと冬優子から高圧的な返答を受けて何とも釈然としないコミュが目立ちます。上から目線で値踏みされている感がハンパないというか、端的に言って可愛くないのですね……。ツンデレの"ツン"を可愛くかつ嫌らしくなく描写するのは難しいのだなあと思わされます。
シャニマスはただアイドルを魅力的に描くだけでなく、Pの努力だったり試行錯誤だったり、Pとアイドルが二人三脚で成長してるんだというところを実感させるのが上手いなと思っていただけに、その点でも残念なコミュではあります。

 

冬優子というキャラの魅力自体も、Pとの関係も、シナリオとしての盛り上がりも、いまいち燃え切らないなあ……という印象が致します。
正直あさひGRADが比較にならんほど素晴らしいです。このままではあさひPになってしまう……。

 

・【アンシーン・ダブルキャスト】について

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イラストも他の2人に比べると……という物足りなさが

これもGRADの延長線上というか、冬優子ver.2って感じですよね。
おそらくGRADを境にライターさんが変更になっていることと無関係ではない(というかそれ以外考えられない)のですが、プロデュースをしながら我々もこの冬優子ver.2に順応しなければならんのか……という思いが頭をよぎっていました。

 

・ストレイライトの二周目フェスアピールについて

冬優子単体ではシナリオ考察する気力が湧かないので、フェスアピールで現れるオシャ英文を書き起こしてみました。

Nirvana
The Butterfly Dream
The world of impermanence

ピンと来る人は来ると思いますが、すべて東洋思想に根ざすキーワードとなっています。


Nirvana=「涅槃」というのは、インドの伝統的な宗教観においては輪廻から抜け出して寂静の境地に到ることです。俗世とアイドルと考えるのは行き過ぎか。
・The Butterfly Dream=「胡蝶の夢」は、荘子の一節で、「自分が蝶になった夢を見ているのか、それとも自分は本当は蝶で人間になった夢を見ているのかは定かでない」というものです。ふゆ⇔冬優子のイメージでしょうか。ここで影を斬って己の半身にするという演出はシビれます。
・The world of impermanenceは、「無常の世」といったところでしょう。これは仏教的価値観に基づいたものですね。現世は無常だから修行して涅槃(解脱)に至ろうぜ、というのが非常におおざっぱな仏教のテーマです。

 

それぞれのキーワードが想起させる世界観がなんとなく掴めて頂けるかと思うのですが、類似の演出となっている愛依とあさひのフェスアピールについても調べてみました。

 

【メイ・ビー】愛依↓
All is vanity
A transient life
A dream within a dream

・All is vanityの出典は、旧約聖書/コヘレトの言葉1章2節と思われます。"Vanity of vanities; all is vanity"とあり、日本聖書協会の邦訳では「空の空/一切は空である」と訳されています。「空」という訳語が若干仏教に寄せている気もしますが、「うつろ」というイメージが"vanity"の中心的な語義ではあります。
・transient lifeについて、同じく聖書に出典があるのでは…と思ったもののぴしゃりと当てはまるバースは見つからず。ただし、ちらほらと儚さ、無常さを描写する文脈では登場してきます。分かる人がいらっしゃれば教えてください。
・A dream within a dreamは、直訳すると「夢の中の夢」となりますが、エドガー・アラン・ポーによる同名の詩が元ネタでしょう。ここから読めます↓

en.wikisource.org

 

【空と青とアイツ】あさひ↓
Panta rhei
All things must pass
The highest excellence is like water

Panta rheiは、ギリシャの思想家ヘラクレイトスの思想を表現したものと言われ、"everything flows"あるいは「万物は流転する」と訳されます。ヘラクレイトスの思想においては、冬優子のところで出てきた"impermanence"も重要なキーワードになります。
・All things must passは、ジョージ・ハリスンによる同名の曲から取ったものでしょう。歌詞は良いことを言っているように見えて結局は色恋沙汰かい!という感じですが……。ビートルズ解散後のジョージがインドかぶれになっていたことも考えれば元を辿ればインド思想に行き着く気はします。

youtu.be


・The highest excellene is like waterは、老子の一節の英訳です。恐らく同じ元ネタの日本酒の方が有名ですが、原文は「上善は水の若し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る、故に道に幾し。」というものです。自然で謙虚な人としての理想的なあり方を水に例えています。むしろ愛依ちゃんじゃん!って思わなくもない。

 

以上見てきたように、「無常」「儚さ」「夢・幻想」等々のかなり似通った概念を表す言葉が選ばれているなという印象です。そういえばアジェンダ283内で、ストレイライトの面々が廃棄CDを見てアイドルの栄枯盛衰に思いを馳せるシーンがありましたね。そこまで繋がっていたとしたら天才と言うほかありません。

ちなみにこれらの思想が洋の東西を問わずボーダーレスなところも、衣装の和風えちえちサイバーパンクな感じにマッチしていてめちゃくちゃ好きですね。

 

新曲"Hide & attack!"の歌詞もこの世界観をそのままに、和風デジロックな楽曲に乗せて「輪廻の運命」や「仮面を纏った」、「演じる私」という単語を散りばめています。曲と絵とシナリオが完璧に噛み合ってる、流石シャニマスさんやで……。

 

新しい冬優子Ver.2に慣れるには今しばらく時間が必要そうですが、ストレイライトは引き続き全力でプロデュースしていきたいと思います。

 

2020/08/13:初稿